「黒蘭姫」(横溝正史)

金田一耕助の事件簿006

祝開業!金田一耕助探偵事務所

「黒蘭姫」(横溝正史)
(「殺人鬼」)角川文庫

「殺人鬼」現在流通している表紙
昭和時代:杉本一文装幀画

百貨店の貴金属売り場で
起きた事件。
宝飾品を万引きしようとした
「黒いヴェールの女」が
売り場主任を刺し殺したのだ。
だが続いて別階の喫茶店でも
殺人が起こる。
支配人は私立探偵に
事件究明を依頼する。
その探偵の名は金田一耕助…。

戦後まもなくの
昭和二十三年に発表された、
金田一耕助の事件簿
最初期に位置する、
橫溝正史の作品です。

【事件簿File-006「黒蘭姫」】
〔事件発生〕
昭和22年11月(東京)
〔依頼人〕
糟谷六助
…百貨店支配人。三十五歳。
 事件解決を金田一に依頼。
〔捜査関係者〕
等々力警部…警視庁警部。
〔事件関係者〕
沢井啓吉
…殺害された貴金属売り場主任。
 一週間ほど前に赴任。
宮武謹二
…喫茶店で殺害された。
 貴金属売り場前主任。
 一週間ほど前に解雇される。
伏見順子
…沢井殺害の際の目撃者。
 10日ほど前に就職。
磯野アキ
…貴金属売り場店員。
 事件の際に席を外す。
柴崎珠江
…沢井殺害の際の目撃者。
綾子・清子
…百貨店内の喫茶店店員。
マダム
…喫茶店マダム。
川崎
…喫茶店の客。
 事件当時来店していた。
新野珠樹
…「黒蘭姫」と呼ばれる。
 盗癖を持つ社長令嬢。
 糟谷六助と婚約している。
新野恭平
…百貨店社長。珠樹の父。
〔事件の概要〕
事件現場:エビス屋百貨店
①三階貴金属売り場で万引を発見した
 売り場主任・沢井が刺殺される
→犯人は黒いヴェールの女
→万引の常習者「黒蘭姫」らしい
②七階喫茶店で沢井の前任者・宮武が
 毒殺死体で発見される
→黒いヴェールの女が接近したことが
 目撃されている

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本作品の味わいどころ①
探偵事務所開業、金田一耕助独立す

「本陣殺人事件」でデビューを果たした
金田一ですが、
「獄門島」事件解決以降、
「暗闇の中の猫」事件で東京進出。
しばらく割烹旅館「松月」に滞在し、
「黒猫亭事件」
「悪魔が来りて笛を吹く」事件を
解決していました。
本事件の数日前、
無事「金田一耕助探偵事務所」開業
その最初の捜査依頼となるのです。

その事務所が入居しているのは
東京大森にある「三角ビルディング」。
「世にも見すぼらしいこの一流ビルの、
これまたとくべつに見すぼらしい
五階」なのです。
部屋も三角形になっていて、
「まるで表現派のお芝居の
舞台装置みたい」。なんとも
金田一にふさわしい事務所です。

本作品の味わいどころ②
現場に出向いた、その足で事件解決

糟谷が依頼を申し込んだその日に、
二人は同道して現場検証、
その中ですぐさま犯人を罠にかけ、
逮捕してしまうのです。
さすがは名探偵。

事件関係者の経歴を
依頼時に受け取っていたとはいえ、
事務所から百貨店に移動し、
まずはじめに第2の殺人のあった
喫茶店のマダムに協力を依頼し、
偽の黒蘭姫になりすましてもらい、
第1の殺人現場へと移動し、
真犯人をあぶり出す。
書かれてあることを総合すると
そうなるのですが、
金田一は推理力よりも
実務遂行能力の方が
はるかに高かったのでしょう。

本作品の味わいどころ③
垣間見えてくる、戦後の日本の状況

暖房の使用できない百貨店、
売り場面積を絞っての経営、
一般人の購買力の低さ、
女子店員たちの
徴用されての工場勤務経験、
関係者の経済格差、等々、
戦後間もない頃の日本の姿が
あちらこちらに記されています。
現代となってはその時代背景が
重要となってきます。
横溝は後世の読み手を
意識していたのでしょうか。

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さて、本事件以後の作品には、
この三角ビルは登場しません。
その後の作品からは、
後期の緑ヶ丘荘に居を移すまで、
再び松月に身を寄せていた
記述が見つかります。
金田一の探偵業は
繁盛しなかったようです。
推理力と商才は別もののようです。

(2021.4.26)

〔追記:動画もよろしく〕
こちらもどうぞ!

墓村幽の味わえ!横溝正史ミステリー

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(2024.1.11)

〔「殺人鬼」〕
殺人鬼
黒蘭姫
香水心中
百日紅の下にて

〔関連記事:金田一耕助の事件簿〕

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